アスベスト(石綿)は、発ガン性など人体に危険を及ぼす物質として、2006年9月以降、建築基準法により日本国内でのすべての使用を全面禁止されています。
しかし、それ以前に製造・販売されているセメント瓦は、アスベストを含んでいる可能性があります。
今回は、そんなアスベストが使用されているセメント瓦について解説していきますが、ます初めにお伝えしておきたいのは、仮にご自宅の屋根瓦がアスベスト配合の瓦だったとしても、そこまで深刻になる必要はありません。
なぜなら、セメント瓦に含まれるアスベストは「レベル3」という、「最もアスベストが飛散しにくいレベル」に指定されているからです。
アスベストは細かい粉末状になることで人体に害を及ぼすものですので、セメントで固められた瓦の状態では危険性は低いというレベルに指定されています。
ですから、仮にアスベストを含んだセメント瓦だったにしても、普段生活する上では特に支障はないということです。
しかし、将来的にセメント瓦の塗装や葺き替え工事などのメンテナンスをする際には非常に重要な項目となりますので、自宅の屋根がアスベストを含んでいるかどうかは、事前に知っておく必要があるでしょう。
※屋根瓦がモニエル瓦(乾式コンクリート瓦)の方は、こちらの記事を参照ください。
セメント瓦にアスベストが混入されているかを調べる方法
セメント瓦に使用されているアスベストは、正式名称「クリソタイル(白石綿)」という成分になります。
このアスベスト、名前の通り白い石綿なんですが、セメントの中に混ぜ込んで製造しているので、見た目では入っているかどうか確認できません。
ではどうやって判別するべきか、その方法がこちらの下記3点です。
✔ 「屋根瓦の製造番号」から判断する
✔ 「アスベスト専門業者」に調査依頼する
「いつ建築したか」で調べる
まずは、家を建築した年からアスベストが使用されているかどうかを判断する方法です。
この方法から分かる項目は2つです。
まず、アスベストを含んだ建材は、2004年までは製造が確認されています。
そして、2006年(平成8年)に全面使用禁止となっていますので
となります。
屋根瓦の製造番号から判断する
次は、セメント瓦本体の「商品名」や「製造番号」から、アスベストが使われている瓦かどうかを割り出す方法です。
✔ こちらが商品名と製造番号の調べ方です。
- 瓦の商品名は、「建築設計図面」もしくは「工務店や建設会社に問い合わせ」して確認することが出来ます。
- 瓦の製造番号(ロット番号)は、瓦の裏側に刻印されています。
瓦の製造番号か商品名が判明したら、今度は国土交通省の「石綿(アスベスト)含有建材データベース」を利用して照合します。
ここで商品名や製造番号などがヒットすると、アスベスト入りのセメント瓦確定となります。
⇒ 国土交通省&経済産業省「石綿(アスベスト)含有建材データベース」
アスベストの専門業者に調査依頼する
これまで二通りの方法を紹介しましたが、それでも分からない場合は、費用は掛かりますが、アスベスト専門業者に調査依頼することも出来ます。
人体に害のあるアスベストですが、現状では調査者の資格を求める法規制などもありません。
しかし、国土交通省はアスベスト現地調査について※公的資格の「特定建築物石綿含有建材調査者」の有資格者を推奨していますので、出来ればその資格を有している調査業者に頼むのがベストでしょう。
あと、業者さんに調査を依頼する前に、環境省のホームページにある「相談窓口」で相談してみても良いかもしれません。
ここまでが、「アスベストが含まれているセメント瓦かどうかの確認方法」です。
『確認方法だけが知りたかった』という方は、これで閉じてもらって大丈夫です。
次の項では、アスベスト入りのセメント瓦の「将来的なメンテナンスの際の注意事項」や「知っておくと得する情報」を解説していきます。
アスベストが使用されたセメント瓦のメンテナンスについて
冒頭でも書いた様に、仮にご自宅の屋根がアスベスト入りのセメント瓦だったにしても、今すぐどうかしなくてはいけないものではありません。
ただし、やはり将来的には何かしらの対策が必要となるのは間違いありません。
ですから、将来的にするであろうメンテナンスについて、「アスベストがどう関わってくるのか」「どういった点に注意しなければいけないのか」などを解説していきます。
アスベスト入りセメント瓦の塗装工事について
まず、屋根の塗装工事(塗り替え工事)に際してですが、塗装工事をするにあたりアスベスト入りのセメント瓦だから、という注意点は特にありません。
劣化した表面を塗装でコーティングして保護してあげるわけですから、むしろアスベストの飛散を防止する効果があるでしょう。
ただし、瓦自体の劣化が進みすぎると、塗装工事自体が出来なくなりますので、約10年に1度の、定期的なお手入れをしていくことをお勧めします。
屋根・外壁塗装を検討される方は、見積もり依頼をする前に、まずはこちらの記事を読んでください。
間違いなく失敗する確率が減るはずです。
アスベスト入りセメント瓦の葺き替え工事について
こちらは、セメント瓦自体が劣化して塗装では収まりがつかない状態の場合の選択肢のひとつです。
確かに、既存の屋根瓦を※全面葺き替え工事をしてしまえば、今後アスベストの悩みはなくなります。
しかし、全面葺き替え工事のデメリットは、その工事費が高額なことです。
特に、アスベスト入りセメント瓦の場合であれば、作業費やセメント瓦の処分費用(産廃費)など、通常よりもさらに高くなる傾向があります。
ですから最近では、既存の瓦をそのままにその上から屋根を取り付ける、カバー工法(屋根重ね葺き工事)を選択する方も増えてきています。
アスベスト入りセメント瓦のカバー工法について
先程紹介したカバー工法(屋根重ね葺き工事)ですが、コスト面だけ考えれば、全面葺き替え工事よりも断然安く済みます。
しかし、お住まいは長く住み続けるものですので、長期的な目線で損得を考えた方が得です。
ということで、カバー工法の「メリット」と「デメリット」がこちらになります。
・全面葺き替えよりも費用が安い
・屋根をかぶせる工事なので、作業中アスベスト飛散は無い
・カバー工法施工後は、アスベスト飛散の可能性は低くなる
・カバー工法は一回しか出来ない。次回は施工不可
・次回葺き替え工事をする時には、処分費が倍になる
・次回家を解体する場合でも、処分費は倍になる
一見、カバー工法は葺き替え工事よりコストが安く、かなり魅力的には見えますが、将来的に処分費は掛かるわけで、その場しのぎ感は否めません。
あとは住まれている方の考え次第ですが、多少お金に余裕があるのであれば、思い切って全面葺き替えしたほうが安心ですね。
アスベスト入りセメント瓦の撤去について
では最後に、全面葺き替え工事などでアスベスト入りセメント瓦を撤去する場合についての注意事項です。
アスベスト入りセメント瓦は、最も飛散しにくいレベル3に分類されています。
とはいえ、既存の瓦を撤去する葺き替え工事では、間違いなくアスベストは飛散します。
お願いする屋根工事業者には、「どういったアスベスト対策をするのか」を事前確認しておいた方が良いでしょう。
健康被害はもちろん、ご近所の方にまで迷惑を掛けない様にだけはしたいところです。
ちなみに、撤去や解体に関しては、厚生労働省認定の国家資格「石綿作業主任者」が必要となりますので、必ず取得の有無を確認しておきましょう。
解体を検討している方は、こちらの「解体工事110番」で簡単一括無料見積を取ると良いでしょう。
※解体は業者により値段の差が激しいので、相見積もり必至です。
アスベスト入りセメント瓦のまとめ
さて、今回は「自宅のセメント瓦のアスベストが入っているか確認する方法」を解説してきましたが、ご理解いただけたでしょうか。
私の本業は「塗装業」ですが、日々お客さんと接していると様々な悩みや相談を受けます。
もうかれこれ20年以上この業界にいますが、アスベストに関しては余り知識を持っていない塗装業者も多く、特にお客さん自身もほとんど情報を持っていません。
もし、この情報が少しでも誰かの役に立てばと思い、本業とは少し違いますが今回記事にしました。
正しい情報を持ってさえいれば、変な業者に騙されることもなくなりますし、適正価格でちゃんとした工事が出来ます。
ぜひ、ひとりでも多くの方に思い通りのお住まいにして頂ければ幸いです。
当ブログでは、他にもお住まいの塗装に関する悩みを解決すべく情報を発信していますので、参考にして下さい。