今回は、「なぜ地元塗装屋(小規模経営)がフッ素塗料をあまり使いたがらないか」について書いていきます。
フッ素塗料と言えば、「塗料の王様」といわれる程、耐久性に優れた素晴らしい塗料です。
一昔前までは公共工事などで使用されるのが主流でしたが、近年では、屋根や外壁塗装としても多く使用され始め、その知名度はかなり上がっています。
私自身も、本業でお客様に提案することも多く、塗料の性能としては疑う余地もありません。
そんなフッ素塗料ですが、なぜか地元の塗装屋さんは潰しにかかるんですよね。
潰しにかかるっていうのは、『フッ素塗料は良くないですよ』と、お客さんに吹き込むことです。
まぁ、仕事が欲しいが為に、他業者が薦めている塗料を悪く言うっていうのは、品がない業者さんがやる常套手段だったりするんですが、それにしてもフッ素塗料を悪く言う業者さんがあまりにも多いな、とずっと感じていました。
そしてその理由について、これまでの業界経営経験を踏まえて、私なりに一つの結論にたどり着つくことが出来ました。
本記事は、フッ素塗料で外壁塗装をお考えの方に是非知っておいて頂きたい、なかなか聞けない塗装業界の裏話です。
これを読むと、フッ素塗装を使う業者側の立場としての裏事情が読み取れます。
フッ素塗料を地元塗装屋さんが使いたがらない「本当の理由」
なぜ地元塗装屋さんは、フッ素塗料あまり勧めたがらないのか。
ご存知のように、フッ素塗料は通常の塗料よりも耐久性に優れていて高級品です。
ですから、普通に考えると『高品質のフッ素塗料を勧めた方がお客さんに喜んでもらえるし、売上げも上がる、良いことづくめでは?』と、考えますよね。
しかし、フッ素塗料を推してくる地元塗装業者は不思議と少ないんです。
実は、これには3つの理由が考えられます。
経営リスク ①
塗料が高い ⇒ 保証の問題
経営リスク ②
塗料が高い ⇒ 塗料在庫の問題
経営リスク ③
高耐久性 ⇒ 塗替えサイクルの問題
この項目を見ただけで、『あ、なるほどね!』と、思われる方もいるかと思いますが、もう少し掘り下げて解説していきます。
専門用語を極力使用せず、初心者でも分かりやすく解説していきます。
①フッ素塗料を使用すると、一つの作業ミスで大きな損害を生む
地元の塗装屋がフッ素塗料を使用しない一つ目の理由は「作業・保証リスクが伴う」です。
先で書いた様に、フッ素塗料は非常に高額です。
日本ペイント㈱のフッ素塗料の代表格商品「ファイン4Fセラミック」などは、1缶の塗料価格が定価では10万近くします。
シリコン塗料は、安いもので1缶15,000円とかですから、いかにフッ素塗料が高いかが、お分かり頂けると思います。
そんなフッ素塗料ですが、扱う側(業者)からすると、その高さゆえのリスクがあります。
これが、地元塗装屋がフッ素塗料を使いたがらない一つ目の理由です。
✔【例えばこんなトラブル】
工事終了後に、『色が気に入らない』とのクレーム。
なんとか折り合いを付ける為、折半で塗り直しをしたとしても、高額なフッ素塗料ではかなりの痛手。
もう一つ上げられるのが、塗装後の施工トラブル。
万が一工事後に不具合が発生して、自社負担で手直しをしなくてはいけない場合。
フッ素塗料の場合、その手直しの負担額が大きい。
結局、業者目線で考えると『そこまでのリスクを背負ってフッ素塗料を塗るメリットってある?』と、なるわけです。
特に、小規模で経営している塗装屋にとっては、非常にハイリスクな塗料となります。
②フッ素塗料を使用すると、余った塗料が経営を圧迫する
二つ目の理由が「塗料の在庫が経営を圧迫する」です。
これも小規模の塗料屋にとっては、かなり死活問題です。
フッ素塗料は定価で1缶10万近くしますので、工事後に塗料が半分余れば、それは5万の在庫を抱えることと同じです。
余った塗料は次の現場で使用したり出来ますが、それが普段選ばないような色の塗料なら、ほぼ出番はなくなります。
しかも、同じフッ素塗料の現場でないといけない。
現場数が多い大手の塗装会社であればなんの問題もないんでしょうが、小規模経営の地元塗装屋となると、間違いなく使用機会に恵まれない永遠の在庫となるでしょう。
仮に、そういった現場が月に5件あれば、25万。
それが1年で300万。
間違いなく死活問題です。
塗料在庫破綻です。
例えばそれが、シリコン塗料だったら・・・。
この辺りが「地元塗装屋が、フッ素塗料を使いたがらない理由」の一つです。
フッ素塗料で塗装すると、次回リピートは20年後
フッ素塗料は、業者にとって「もろ刃の剣」みたいなものです。
フッ素塗料は一度塗ると20年近く長く持ちます。
ということは、必然的に次回塗装工事するのも20年後。
そうなんです。
「フッ素塗料を使うと、リピート周期が長くなる」んです。
これがフッ素を使いたがらない三つ目の理由です。
比較的営業力が弱い地元塗装屋にとって、さすがに20年間新規営業だけで走り続けるのは過酷ですよね。
しかも、その親方が40代であれば20年後は60歳、頑張ってもあと一回工事できるかどうか。
それでは未来が見えない。
であれば、『やっぱり10年前後で提案できるシリコン塗料のほうがいいな』と、なるわけですね。
10年間しっかりアフターフォローを行い、信頼関係が出来た顧客に対して再アプローチしていった方が、経営上だんぜん良いわけですね。
人気がある塗料とは、単に業者が薦めている塗料の順位に過ぎない
さて、「なぜ、地元塗装業者がフッ素塗料を使用したがらないか」を解説してきましたが、その理由や事情は理解いただけたと思います。
結局のところ、これだけ信頼性のあるフッ素塗料の「ありもしないデメリット」や「叩かれる」原因のほとんどは、「使う側(業者)の経営上の都合」から生まれたものではないかと考えられます。
営業力のある大手塗装会社が、より優れたフッ素塗料や無機塗料を選ぶのに対して、地元塗装屋はウレタン塗料やシリコン塗料といった手ごろな塗料を選ぶ。
それらは経営上なるべくしてそうなっている、と思うのです。
ですから私が声を大にして言いたいのは、「塗料はぜひ、自分自身で選んでほしい」ということです。
そして、その為にも最低限の「使用する塗料の知識」を得て下さい。
現在、インターネットなどで塗料の情報を検索すると、「おすすめ人気塗料ランキング」や「この塗料を使っとけば間違いない」など、さまざまな情報が出まわっています。
こういった口コミやランキングなどを見ると安心しますよね。
しかし、考えてみて下さい。
塗料を指定して、業者に塗装工事を依頼している方がどれだけいるか。
少なくとも今まで私が商談してきた中で、塗料を指定してこられたお客さんはほぼ皆無です。
残念ながら、どのお客さんもまったく塗料の知識を持っていません。
なんの塗料を塗るかは、ほぼその業者が薦める塗料なんです。
そして、「その塗料を勧めてくる業者が言っていることが本当かどうか」を、「信用出来るか出来ないか」ということに変換して判断してしまう。
これはもう、ギャンブルでしかありません。
ということは何が言えるかというと、ちまたでいわれている「人気塗料ランキング」や「おすすめ塗料ランキング」とは、「業者が薦めている塗料ランキング」に他ならないということです。
塗装工事において塗料は、工事前に唯一性能が分かるものです。
ですから、しっかりと塗料の情報を得て、ご自身の将来設計に合う塗料かどうかを判断して、後悔のない塗装工事をして頂きたい、と切に願います。
「外壁塗装の見積もりを取る前に」必ず読んでほしい記事がこちらです。
この情報が少しでも役に立てば幸いです。