梅雨時期の外壁塗装工事は本当に問題ないのか?雨が多い時期の工事デメリットと注意点を解説

梅雨時期の外壁塗装工事は問題ないの?雨が多い時期の工事デメリットと注意点を解説

 

塗装業者に梅雨時期でもまったく問題ないといわれたが本当に大丈夫なのか不安…。もし梅雨時期に塗装工事をする場合、どのような点に気をつけるべきか知りたい。

 

 

外壁塗装工事の推奨時期について、塗料最大手メーカー「日本ペイント」の回答がこちら。

冬場の寒いときや、夏場の暑いときに外壁や屋根を塗装しても問題ないですか?


A:気温5℃以上、湿度85%未満の気象条件の下で塗装可能です。冬場、夏場は制約が多いため、春と秋が塗装に向いた季節といえます。

 

引用:日本ペイント「よくあるご質問

 

日本ペイントが推奨している外壁塗装に適した季節は。では梅雨時期はどうなのか?

 

ということで本記事では、外壁塗装工事の

  • 梅雨時期に起こりうるリスクやデメリット
  • 梅雨時期に起こったトラブル事例
  • 梅雨時期の注意点
  • 梅雨時期のよくある質問

などをまとめていますので、ぜひ参考にしてください。

 

本記事は、塗装業界歴21年、塗装業経営7年の私がこれまでの経験や実体験に基づいて執筆している内容となります。
目次

梅雨時期でも塗装工事は可能

 

結論から申し上げると、梅雨時期でも外壁塗装工事は可能です。

 

「雨が降っていても塗装はできるのか?」「途中で雨が降り出したら塗料が流れ落ちるのではないか?」と心配されている方も多くいるようですが、問題ありません。

 

まず、雨が降っている日に塗装工事を行うことはありません。それに、建築用塗料は速乾性があり、塗装して1時間もすれば表面はすでに硬化しており、雨で流されるような心配もありません。

 

とはいえ、やはり梅雨時期の塗装工事はリスク(デメリット)ゼロというわけではありません

 

 

梅雨時期に塗装工事を行うデメリット

梅雨時期に塗装工事を行うデメリット

 

では、梅雨時期の塗装工事についてのデメリットを解説していきます。

 

■梅雨時期のデメリット

  • 塗装工事が長期化する
  • 不具合が起こる可能性もある

 

塗装工事が長期化する

 

先程もお伝えしたように、梅雨時期の塗装工事は晴れた日を見計らって作業をしますので、どうしても工事期間は長くなります。通常であれば1週間程度で終わる塗装工事も、梅雨時期は2〜3週間、下手すれば1ヶ月近くかかるケースも珍しくありません

 

それに、工事期間中は養生シートといって、窓などに塗料がつかないようにビニールで囲うため、外からの光(太陽光)が遮られますので、昼夜問わず部屋の電気をつけておく状態になることも予想されます。

 

特に、家にいる時間が長い高齢者の方などにとっては、この薄暗くどんよりした雰囲気が長期的に続くことで想像以上のストレスや苦痛を感じられる方も多いので注意です。

 

不具合が起こる可能性もある

 

冒頭で梅雨時期でも塗装工事は可能とお伝えはしたものの、やはり塗装(塗料)は湿気に弱く、塗装業者の工事の進め方次第ではのちのち不具合を引き起こす可能性もあります。

 

例えば、

  1. 小雨だから大丈夫という業者判断で塗装工事を行った
  2. 塗装工事の途中で雨が降り始めた
  3. 天候が悪くなり始めたので急ピッチで塗り上げた

などです。

 

雨が降っているのに塗装工事をするというのは論外ですが、雨が降り始めたので急ピッチで仕上げたりすることはよくあります。そういった時に限って、普通では起こり得ないミスが起こり、施工に不具合が生じたりするものなのです。

 

それに、塗装屋も一つの現場に日数をかけすぎてもお金になりませんので、早く終わらせたい心理が働きますので、その辺りもデメリットに繋がる要因だと思います。

 

実際に起こった梅雨時期の塗装工事トラブル

 

ここでひとつ、私が過去に実際に経験した梅雨時期だからこそ起こったトラブル体験についてお伝えしておきます。

 

仮にちゃんとした塗装工事を行っていたとしても、梅雨時期にはこういった不具合も起こりえるんだと知っていただければと思います。

 

  • 外壁:サイディングボード
  • 使用塗料:一液形 水性塗料(某大手塗料メーカー)
  • 塗布部位:外壁
  • 症状ベランダの壁に吹き上げても取れない雨だれ(雨スジ)発生

 

【状況】

不具合発生までの流れ
  • 6月中旬
    工事完了

    6月中旬から外壁塗装工事を開始。当然ながら梅雨時期の晴れた日を選んで慎重に塗装工事を行い、実日数8日ほどですべての工程が完了し無事引き渡し。

  • 6月末
    不具合発生

    それから1週間ほど経過した後に施主さんから「ベランダ部に雨だれ(雨スジ)が発生した」との連絡を受け、すぐに現場直行。ベランダにお邪魔して直接吹き上げを行うが、雨だれはいっこうに取れる気配がない。なぜ取れない?

  • 7月初旬
    現場調査

    使用した某大手塗料メーカーに問い合わせをしてみると、直接担当者が現場調査をしてくれることとなり、後日調査報告書をもらう。

 

【原因】

 

吹き上げても取れない雨だれの原因は、塗膜(塗装の膜)が完全に形成される前に雨が中に入り込んだために起こった不具合とのこと。

 

今回使用した塗料は「一液形の水性塗料」で、塗料メーカーいわく「塗装の表面はすぐに乾くが、中まで完全に乾くには長ければ1ヶ月かかる」とのこと。

 

つまり、塗料が完全に固まる前にベランダの手すりなどに付着していた汚れが雨水と混じり、塗膜の中に侵入、その状態で固まってしまったとのこと。工事完了後に、雨が降り続く梅雨時期だからこそ起きたトラブルだということです。

 

【対策】

 

では、梅雨時期のこのような不具合を回避するためにはどのような対策を講じたら良いか?とメーカーに問い合わせたところ、

 

「梅雨時期など湿気が多い季節では、二液形の塗料(塗料を早く固める硬化剤を使用するタイプ)、そして溶剤形塗料(油性塗料)を使うことを推奨します」

とのことでした。

 

実際のところ、今回我々の施工上の問題はなかったにもかかわらず、こうした予期せぬトラブルが起こってしまうという点が梅雨時期の一番怖いところでもあります。

 

 

梅雨時期に塗装工事をする方へ、プロからのアドバイス

梅雨時期に塗装工事をする方へ、プロからのアドバイス

 

では、梅雨時期に外壁塗装工事を行う場合、具体的にどのような点に気をつけておけば良いか?を、これまでの現場経験に基づいて私なりにアドバイスさせていただきます。

 

  • 梅雨時期の塗料は「2液 油性塗料」を推奨
  • 工事期間が長くなることを十分理解しておこう
  • 無理に工事を急がせても良いことひとつない

 

梅雨時期の塗料は「2液型 溶剤(油性)塗料」を推奨

 

梅雨時期の塗装工事には、2液の溶剤塗料(油性塗料)を選ぶことを強くお勧めします。特に、梅雨時期に1液の水性塗料だけはやめておきましょう。

 

先ほど紹介した実際に起こった塗料不具合にでも解説したように、1液の水性塗料は完全に塗膜が形成されるまでに1ヶ月近く時間がかかるためです。(※日本ペイントの見解)

 

これは、仮に晴れの日に塗装しても後日雨が降り続けば、何らかの影響で塗膜の中に雨が侵入する可能性があるためです。※通常は塗装した表面が乾けば侵入することはありません。

 

➡︎1液塗料・2液塗料の違い

 

工事期間が長くなることを十分理解しておこう

 

通常、外壁塗装の工事期間は1〜2週間程度です。しかし、梅雨時期は下手したら1ヶ月近くかかることもあります。もしこれが苦痛と感じるようでしたら、梅雨時期の塗装工事はやめておいた方が良いでしょう。

 

ちなみに工事期間中は、養生で窓や玄関ドアなどをビニールで囲ってしまうので部屋は暗くなり、昼夜問わず電気を付けるようになります。あと、油性タイプの塗料は多少シンナー臭が多少部屋にこもるようになるので、臭いに敏感な方にはおすすめしません。

 

➡︎水性・油性の違い

 

無理に工事を急がせても良いことひとつない

 

「梅雨時期は工事期間が長くなる」とは分かっていても、まったく終わりの見えない状況に徐々に不満や苛立ちが募り、ついつい塗装業者に愚痴りたくなるものです。

 

しかし、塗装工事を急がせても良いことはひとつもありません。一番最悪なのは、業者が焦って雨の日でも無理して工事に入ろうとして、あとあと不具合が発生してしまうことです。これでは本末転倒です。

 

むしろ梅雨時期に工事が長引いているというのは、しっかり状況を確認しながら確実な塗装工事をしようとしている良い塗装業者だという証拠でもあるのです。

 

大切なことは、「早く工事が終わること」ではなく、「しっかりした塗装工事をしてもらうこと」であることを忘れてはいけません。

 

 

梅雨時期の塗装工事でよくある質問【FAQ】

 

さて、最後は梅雨時期の外壁塗装工事についてのよくある質問をまとめてみましたのでどうぞ。

 

 

Q
梅雨時期は工事費が安くなるってホント?
A

梅雨時期は塗装業界全体が閑散期(仕事が少ない時期)ですから、業者によっては多少値引きしてくれることもあるかもしれませんね♪ どの業者も仕事が無いよりはあったほうが良いですから。

Q
「梅雨時期は逆におすすめ!」と塗装屋に言われたけどなぜ?
A

・腕の良い職人でも手が空いている

・多少の値引きならしてもらえるかもしれない

などの梅雨限定メリットはあると思いますが、梅雨時期の工事がおすすめかと言われるとちょっと微妙なところです。おそらく自社に都合よく営業するための「ポジショントーク」です。

Q
雨でも塗装できる塗料があると聞いたけど?
A

「雨の日でも塗装作業ができる塗料」ということで業界でも話題になった水性塗料「アレスダイナミックシリーズ」(関西ペイント)のことですね。私も気になり、「仕上がりは晴れの日と変わらないのか?」と関ぺの担当者に問い合わせしたら「そりゃさすがにカラッと晴れている時の方が良いに決まっていますよ」との回答でした。

※最終仕上げ(上塗り2回目)だけは、完全に乾燥した状態で塗る必要があります。

Q
工事が長引くと追加料金が発生したりするの?
A

工事の遅れの原因がお客さんの都合であれば別ですが、今回のように梅雨が原因で工事の遅延がみられる場合は追加料金が発生することはまずありません。念の為、見積もりの段階で塗装業者に確認しておくと安心でしょう。

Q
外壁や屋根に塗った塗料は雨で流れたりする?
A

建築用塗料は、一度乾いてしまえば雨で流されるようなことはありません。塗料の製品や気候・環境にもよりますが、塗膜表面はおおよそ1時間ほどで手に付かない状態にまで乾燥します。塗っている最中に塗布面に雨が降り注ぐと、「かぶり」といって硬化不良で塗装表面が白く濁ったような仕上がりになってしまいます。

Q
前日雨が降っていたけど、塗装しても大丈夫?
A

塗装する面が濡れていたり湿気を含んでいない限り施工に問題ありません。

Q
雨の日でも作業できることがあるの?
A

■雨が降っていても作業可能な工程

・足場組み・解体作業

・屋根や外壁の高圧洗浄

■これから雨が降りそうな状態での作業

・養生シート(窓や玄関ドアなどをビニールで囲う作業)

高圧洗浄に関しては、むしろ雨の日を好んで行うことがあります。汚れを含んだ水しぶきがご近所に飛散しにくくなるためです。

Q
塗装が可能かどうかはどうやって判断しているの?
A

塗料メーカーが推奨している塗装可能な気象条件は「気温5℃以上、湿度85%未満」です。ですから、まず雨が降っている中での塗装工事は不可能です。晴れた日に屋根や外壁の乾き具合を確認し、1日の天候の移り変わりを予測して段取りを組みます。

Q
晴れているのに工事に入らない日があるのはなぜ?
A

複数の現場を並行して工事している業者の場合、晴れた日にひとつの現場に総動員して一気に工事を終わらせたりしますので、天気が良いのに入ってくれない、もしくは作業している職人の数が少ない、といったこともあります。それが良いか悪いかは別にして、それも梅雨時期によくあるデメリットの一つです。

Q
外壁塗装工事に適している時期はいつ?
A

やはり天候が良い春や秋が最もリスクが少ない季節だと考えます。別記事で外壁塗装工事のおすすめの季節を紹介していますので、ぜひ参考にしてみてください。

 

 

まとめ:梅雨時期の外壁塗装はできる?

まとめ:梅雨時期の外壁塗装はできる?

 

繰り返しますが、梅雨時期の外壁塗装工事は可能です。しかし、個人的には梅雨時期の工事はおすすめしません。なぜなら、梅雨時期の塗装工事は、他季節と比べるとどうしても作業上の問題や不具合リスクが高くなるためです。

 

また、梅雨時期の外壁塗装工事は、特に塗装業者の経験と的確な判断力が問われる季節でもあります。そのため、塗装業者の選択も非常に重要となります。

 

そうでなくとも外壁塗装工事は人が行う作業であり、どんな季節や条件で行ったとしても100%完璧な工事になるわけではありません。予期せぬトラブルが起こる可能性もあるわけです。ですから、せめて工事時期だけはリスクの少ない季節を選ぶことが重要だと思います。

 

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この記事を書いた人

年商6億の元塗装会社社長がお届けする外壁塗装の豆知識。業界20年の経験・体験をもとに、他では聞けない役立つ情報から裏情報までお届けしています!
<これまでの経歴>
大手不動産会社勤務、大手塗装会社勤務、2015年塗装会社設立、約20年以上にわたり建築塗装全般に携わり、現在は塗装業のコンサル事業を展開。

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