現在、外壁塗装で使用される塗料の種類はかなり多く、どれを塗れば良いのか?と悩んでいる方も多いのではないでしょうか。
今回は、特に塗装業者がよく見積もり提案してくる「ウレタン塗料」と「シリコン塗料」の2タイプの塗料について、それぞれの特徴や比較や耐用年数の違い、相場価格やコスパなどから最終的に「どっちを選ぶべきか?」について分かりやすく解説していきます。
記事後半では、より深掘りした内容の「塗料を選ぶ際の注意点やポイント」などの情報もお届けしていますので、ぜひ最後まで読んで参考にしてください。
関連記事
ウレタン塗料の特徴
アクリルウレタン樹脂塗料(通称:ウレタン塗料)は、アクリルポリオール(アクリル樹脂の原料)をベースにポリイソシアネート樹脂(ウレタン樹脂の原料)を混合させて造られた塗料のことです。
アクリルウレタン樹脂塗料の歴史は古く、昭和31年(1956年)頃にはすでに”2液型ポリウレタン樹脂塗料”が開発されていたようです。※参照元:小林塗装「塗料・塗装の歴史について」
1990年初頭にシリコン樹脂塗料が登場するまでは、ウレタン塗料は一般住宅向け塗装工事の主力商品として大活躍しました。現在は建築物の塗装での使用頻度は減りましたが、自動車、家具、床材などの様々な用途に広く利用されています。
最近ではウレタン塗料を使う塗装業者はめっきり減りました!
シリコン塗料の特徴
アクリルシリコン樹脂塗料(通称:シリコン塗料)は、アクリル樹脂をベースにシリコン樹脂を配合させた塗料になります。
シリコン塗料は昭和59年(1984年)頃から登場し、先述したウレタン塗料より高品質で耐久性に優れていることから、現在では建築用・産業用・工業用など幅広い分野で使用されている塗料になります。
シリコン塗料は、現在外壁塗装工事で一番使用されている塗料になります!
ウレタン塗料とシリコン塗料の耐用年数を比較
では、まずはウレタン塗料とシリコン塗料の耐用年数を比較していきます。
耐用年数とは、塗料がどのくらい持つか?という目安になる年数、つまり、「塗装の寿命」のことですね!
■塗料の樹脂別 耐用年数表
塗料グレード(樹脂) | 耐用年数(目安) |
アクリル樹脂塗料 | 約3~5年 |
ウレタン樹脂塗料 | 約5~8年 |
シリコン樹脂塗料 | 約8~13年 |
フッ素樹脂塗料 | 約13~18年 |
上の表は、代表的な4種類の塗料(アクリル樹脂・ウレタン樹脂・シリコン樹脂・フッ素樹脂)の耐用年数を表したものになります。
ウレタン塗料の耐用年数は約5〜8年。一方、シリコン塗料は約8〜13年と言われていますので、シリコン塗料の方が性能が高いと言えます。
ウレタン塗料とシリコン塗料の価格(m2単価)を比較
続いて、ウレタン塗料とシリコン塗料の平米単価を比較してみましょう。
■ウレタンとシリコンの価格比較表
塗料の種類 | 平米単価(㎡) |
ウレタン塗料 | 1,500〜3,500円/m2 |
シリコン塗料 | 2,500〜3,800円/m2 |
※平米単価は大手塗料メーカーの設計単価表を参考にしています。
ウレタン塗料の平米単価は1,500〜3,500円/m2、一方シリコン塗料は2,500〜3,800円/m2となり、若干ウレタン塗料の方が安いといえます。
※平米単価の幅については後ほど詳しく説明していきます。
塗料の平米単価とは、1m×1mの面積を塗る場合にかかる塗料代+施工代のことです。
ウレタン塗料とシリコン塗料のコスパ比較
では次に、ウレタン塗料とシリコン塗料のコスパの比較をしていきます。おそらくここが一番気になる点ですよね。
外壁塗装のコスパの考え方は、年次コスト(1年間にかかる費用)で換算します。今回は、150㎡の外壁をウレタンとシリコンで塗装した場合のコストの比較をしてみます。
ex>150㎡の外壁面積を塗装した場合のウレタンとシリコンの工事費用比較
ウレタン塗料 | シリコン塗料 | |
足場費用 | 15万 | |
外壁塗装費 | 22.5〜52.5万 | 37.5〜57万 |
付帯塗装費 | 15万 | |
その他費用 | 10万 | |
総 額 | 62.5〜92.5万円 | 77.5〜97万円 |
上の表を見ていただくとわかるように、ウレタンとシリコンの工事費の差額は5〜15万円ほどですが、そもそもウレタンとシリコンでは塗料の持つ年数(耐用年数)が違いますので、単純比較はできません。
ですから、今度はそれぞれの工事費を耐用年数で割り、1年間にかかる年次コストを算出して比較してみます。
■ウレタン塗料とシリコン塗料のコスパ(年次コスト)比較表
ウレタン塗料 | シリコン塗料 |
11.5〜12.5万円/年 | 7.4〜9.6万円/年 |
ウレタン塗料で塗装した場合の1年間にかかるメンテナンスコストが11.5〜12.5万円に対して、シリコン塗料は7.4〜9.6万で済みますので、やはりシリコン塗料の方がコスパ(ランニングコスト)が良いという結論に至ります。
シリコン塗料ならすべてウレタン塗料より性能が高いとは限らない!
さて、これまでウレタン塗料とシリコン塗料の性能面や耐用年数、コスパ面などを比較してきましたが、基本的にはウレタン塗料よりシリコン塗料の方が優れているといえます。
しかし、安易に「シリコン塗料だからウレタンより性能が上だ」と判断してしまうと失敗することもあるので注意です。
これから説明する内容は本記事のキモと言える部分なので、ぜひ理解できるまで何度も読んでください。
樹脂の種類(名前)だけで判断すると失敗する
これまで「樹脂の種類」によって塗料の性能が判断できると説明してきましたが、それと同じぐらい重要な要素が「樹脂の「含有量」です。
含有量(がんゆうりょう)とは、塗料に含まれる樹脂の割合(濃度%)のことです。
例えば、上の図のように同じシリコン塗料でも5%しかシリコン樹脂が含まれていないシリコン塗料もあれば、50%近くシリコンが含まれたシリコン塗料もあるわけです。当然ながら塗料の性能(耐用年数)は後者の方が圧倒的に高くなるわけですね。
もちろんそれに応じて塗料価格や耐用年数、コスパもガラリと変わります。先ほど紹介した塗料の平米単価や耐用年数に幅を持たせて記載しているのは、そういった理由からです。
オレンジ果汁が1%しか入ってなくてもオレンジジュースと呼ばれているのと同じですね♪
樹脂の濃度次第ではシリコン塗料よりウレタン塗料の方が性能が高いケースも!?
では今度は、含有量40%のウレタン塗料と含有量5%のシリコン塗料の2パターンを比較してみましょう。
樹脂の種類から判断すると当然シリコンの方が上ですが、このシリコン塗料はたったの5%しかシリコン樹脂が含まれていません。
こうなってくると含有量40%のウレタン塗料の方が性能が高くなり、ウレタン塗料がシリコン塗料を上回るという逆転現象がおきるわけです。
冒頭でお話ししたように、ウレタンはアクリル+ウレタン、シリコンはアクリル+シリコンで構成されている為、含有量が少ないとアクリル樹脂の性能(耐用年数3〜5年程度)が強く出るわけです。
外壁塗装も同様に、名前ばかりの中身空っぽの詐欺みたいな低性能塗料も数多く流通されていますので、シリコン塗料だから大丈夫と安易にとらえず、製品や製造メーカーの確認をすることがとても大切です。
「シリコンなのにずいぶん安いなぁ」と感じたら要注意ですね。
塗料に含まれる樹脂の含有量を調べる方法
では、どのようにして塗料に含まれる含有量を調べたら良いのか?
残念ながら、塗料に含まれる樹脂の含有量は塗料カタログや塗料メーカーのウェブサイトでも一般公開されていないことがほとんどです。
一部の塗料メーカーについては問い合わせすれば教えてくれたりもしますが、ほとんどの場合は同業他社に真似されることを警戒してなのか、塗料の成分表を公開していないのです。
私も20年以上この業界にいますが、さすがにすべての塗料の含有量を把握できているわけではありません。しかし、「この塗料はかなり良い」と思える塗料は知っていますので、そちらを参考にしていただければと思います。
※おすすめのシリコン塗料はこちら
まとめ:外壁塗装のシリコン塗料とウレタン塗料はどちらが良い?
さて、今回はウレタン塗料とシリコン塗料ではどちらが良いのか?どちらを選んだほうが良いのか?ということで両者を比較をしてきましたがいかがだったでしょうか?
最後に、もう一度重要な点を振り返っておきましょう。
✅ウレタン塗料とシリコン塗料の比較まとめ
- 樹脂の種類で判断するとウレタン塗料よりシリコン塗料の方が性能は高いといえる。しかし、樹脂の濃度(含有量)次第ではウレタン塗料の方が性能が高いケースも出てくるので一概にシリコンが良いとはいえない。「シリコン塗料なのに安いな?」と感じたら、その中身(含有量)を塗装業者に直接聞いてみよう。
- 塗料の中でも一番商品数(種類)が多いといわれているのがシリコン塗料。そして同時に騙されやすいのもシリコン塗料。どのメーカーのどんなシリコン塗料を選ぶかがかなり重要なカギを握る。高性能シリコン塗料は別記事で紹介しているので、ぜひそちらを参考に。
最後に個人的な見解を述べると、私は多少高くてもシリコン塗料をおすすめします。
外壁塗装工事には塗料の種類に関わらずかかってくる費用があります。例えば、足場代や人件費といった費用です。これらはどの塗料を塗ったとしても変わらない費用帯なのです。シリコン塗料だから良い職人が作業するわけでもありませんし、シリコンだから立派な足場が組まれるわけではありません。
もちろん塗料一缶あたりのウレタンとシリコンの価格を比較すると数万円違うかもしれません。しかし、全体のトータルコストで換算するとわずか数%の違いです。
何が言いたいかといいますと、工事の回数が増えれば増えるほど、一回分の工事にかかる塗料代の差よりも足場代や人件費といったコストの方が大きくなるということです。つまりは、「いかに塗装工事の回数を減らすか=いかに塗装を長く持たせるか?」という長期的な視点で考えることが、外壁塗装工事において賢い得する方法なのかなと思います。
■塗料選びのすべてがわかる記事
■シリコン塗料
■ラジカル塗料
■フッ素塗料
■無機塗料
■特殊な塗料
- 遮熱塗料って実際効果あるの?エアコン代が安くなるってホント?
- 外壁のクリア塗装はどんな人に向いている?デメリットやよくある質問Q&A
- デザイン重視のセラミック塗料とは?相場費用やデメリットを解説!
- プロが選ぶ!おすすめセラミック塗料ランキング6選&有名塗料メーカー紹介
- ジョリパッドとはどんなもの?
- ジョリパットの塗り替え時期はいつ? おすすめ塗料とメンテナンス方法
■その他の塗料に関する情報