最近ではこのようにオリジナル塗料を前面に押し出しておすすめする塗装業者も多くなり、本当にそんなにすごい塗料なのか?信じても大丈夫なのか?と疑問に感じている方も多いはず。
ということで今回は、オリジナル塗料についてその性能や仕組み、塗料価格の妥当性やメリット・デメリットなどについて詳しく解説しています。
外壁塗装のオリジナル塗料とは?
オリジナル塗料とは、その会社が独自に取り扱っているブランド塗料です。
オリジナル塗料といえば、少し前までは大手塗装会社(訪問販売業者)を象徴するようなモノでしたが、現在では営業が得意な個人塗装店から積水ハウスなどのハウスメーカー、それにヤマダ電機といった新参業者もオリジナル塗料を取り扱い始めています。
オリジナル塗料の実態・正体
オリジナル塗料と聞くと、その会社が独自に開発・製造した塗料と勘違いしてしまいそうですが、中身は100%市場に一般流通している塗料です。
つまり、どこかの塗料メーカーが製造した既製品塗料のラベル(商品名)だけ張り替えた、簡易OEM商品となります。
なかには「自社で開発した塗料」などと謳ってくる塗装業者もいますが、一介の塗装業者が塗料を製造することは物理的に不可能です。間違いなくOEM塗料です。
私が知る限り、日本ペイント・エスケー化研・KFケミカル・菊水化学・山本窯業化工などのOEM塗料が最近の主流ですね。
オリジナル塗料の仕組み
オリジナル塗料の仕掛け人は塗料販売代理店です。代理店が企画・提案しています。
■オリジナル塗料の企画の仕組み図
まず塗料代理店が塗料メーカーにオリジナル塗料(OEM)の許可をもらい、取引先の塗装業者に企画・提案を持ちかけるといった感じです。
オリジナル塗料のパンフレット企画からホームページの修正案など、すべて塗料代理店がアドバイスをくれるので、塗装業者がやることといったら塗料のネーミングを決めるぐらいなものです。
(※実際にうちも以前オリジナル塗料を扱っていたので)
その後、塗装業者はオリジナル塗料をメイン商材として売り出していくので、塗料代理店としては安定した出荷量が見込め、お得意様を他の代理店に取られる心配もなくなるので美味しいビジネスなのです。
「OEM塗料 制作」でググるといろんな塗料販売代理店が企画・制作していますよ。
オリジナル塗料の相場価格
オリジナル塗料の価格は、元になっている塗料よりも高く設定されています。
まぁこれは冷静に考えたら分かることですが、元になっている既製塗料より安く売るなら、わざわざコストや時間をかけてオリジナル塗料にする必要がありませんからね。
塗装業者としては、「自社だけが取り扱っている」というプレミア感を演出して、いかに付加価値をつけて売るかがオリジナル塗料の最大の魅力ですから、高くて当たり前なのです。
オリジナル塗料の性能・実力
オリジナル塗料の性能は、塗装業者によってピンキリです。じつはここがオリジナル塗料の最大の難点です。
基本的に高スペックな塗料をオリジナル塗料として取り扱うことが多いのですが、なかにはあり得ないほど低スペックな塗料をオリジナル塗料として扱い、高額な工事価格で営業している悪質な塗装業者もいます。
どこの塗料メーカーのどの製品なのか、塗料の成分や性能などが不透明なまま工事することになるので、オリジナル塗料はやはりそれなりのリスクがついてまわるものなのです。
外壁塗装を成功させる秘訣は「リスクは最小限に抑えること」です!
外壁塗装業者がオリジナル塗料を扱いたがる理由と目的
次に、なぜ最近多くの塗装業者がオリジナル塗料を取り扱い始めているのか?についても説明しておきます。
これにはいくつかの明確な理由・目的があるんですよね。
① 見積もりの比較を難しくさせる
塗装業者がオリジナル塗料を扱う最大のメリットは、お客さんに見積もり比較を難しくさせられる点です。
塗装業者は、オリジナル塗料がどのメーカーのどの製品だということを明言しませんので、お客さんは担当者が説明する塗料の性能や耐用年数を信じるほかないわけです。
良い言い方をすれば差別化を図れる、悪い言い方をすればいくらでも誤魔化しが効く、ということです。
② 比較できないオリジナル塗料は自由に価格設定できる
どこのメーカーのどの製品(塗料)なのかが分からなければ、お客さんはその塗料の相場も調べることができません。
となると極端な話、塗装業者は見積もり金額をいくらにだって設定できるわけです。
仮に他社見積もりより50万高かったにしても「うちの塗料は特別だから、他では扱っていない最高級塗料だから」といえば済む話なのです。
③ オリジナル塗料を扱うことで人材育成が楽になる
塗装業者は、オリジナル塗料を扱うことで人材教育がかなり楽になります。
まず、販売する(扱う)材料を固定することで簡単に営業マニュアルが作成できます。そして、そのマニュアルとオリジナル塗料の特性などを頭に入れておけば、たとえ塗装の知識が浅い新人であってもそれなりの営業が可能になるのです。
④ オリジナル塗料にすることで塗料原価を下げられる
塗装業者は、塗料を固定して一定量発注することを条件に塗料代理店と原価交渉を行うことが可能です。
材料代(原価)が下がれば当然利益率も上がりますので、塗装業者としてもオリジナル塗料を扱うメリットがあります。
このように、外壁塗装業者にとってはオリジナル塗料を扱うことで得られるメリットは計り知れないわけです。ですから多くの外壁塗装業者がこぞってオリジナル塗料を使い始めているんですね。
オリジナル塗料を使うメリットとデメリット
では逆に、お客さん側がオリジナル塗料を使うメリットはあるのか?についてですが、残念ながら一つもありません。一つもメリットがないんです。
そしてオリジナル塗料のデメリットはいくらでもあります。
「自社独自のオリジナル塗料です」なんて説明されるとプレミア感もあり、なんだか良さそうなイメージを抱いてしまいますが、実際はお客さん側になんのメリットもない、デメリットだらけの塗料なんです。
塗料は、外壁塗装の中で唯一工事前にその性能がわかる要素になります。その塗料自体がどんなモノか把握できないわけですから、これは完全にギャンブルをしているに等しいレベルなのです。
まとめ:外壁塗装のオリジナル塗料ってどう?
今回はオリジナル塗料について色々と解説してきました。
結局のところオリジナル塗料というのは、塗装業者にメリットのあるように作られている塗装業者のための営業ツールみたいなモノです。塗装業者にメリットはあれど、使う消費者側には何一つメリットがありません。
もちろんオリジナル塗料のなかには素晴らしい製品もあると思います。しかし消費者にはそれを見分ける手段がないのです。それであればすでに流通している同等ランクの既製品(塗料)で外壁塗装をした方が価格面でも断然良いわけですね。
外壁塗装工事は塗料次第で決まると言われるぐらい塗料の選定は重要な要素です。そして外壁塗装を成功させる秘訣は失敗するリスクを少しでも減らしていくことです。
そう考えると、製造元メーカーも成分も性能も不透明なオリジナル塗料を使う理由は見当たらない。これが長年この塗装業界で生きてきた私個人の見解です。
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