リシン吹き付け塗装とは?相場価格や耐久性・塗り替え時期のタイミングについて

リシン吹き付け塗装とは?相場価格や耐久性・塗り替え時期のタイミングについて

今回は、外壁塗装で使用される「リシン吹き付け塗装」について解説していきます。



✅リシン吹き付け塗装に関して、下記のような疑問を持った方必見の内容です。

  • 建ててもらった工務店からリシン吹き付けでの塗り替えを提案されたけど、性能的にはどうなんだろう?
  • 新築時に外壁をリシン吹き付けで塗装しているけど、そもそもリシン吹き付けってどんな塗装なの?



本記事前半では、「リシン吹き付けとはどのような塗装なのか?」という特徴メリット・デメリット、それに価格相場塗り替え時期のチェック方法などを詳しく解説しています。

 

記事後半では、リシン塗装の種類アスベストに関する情報、結局のところ塗り替えに向いている塗料といえるのか?を塗装業界人としてズバリ解説していますので、ぜひ最後までご覧ください。

 

 

目次

リシン吹き付け塗装とは?

谷川建設の外壁材(パネル)に吹き付けリシンが施されている画像
谷川建設の外壁材(パネル)にも「吹き付けリシン」が施されている

 

リシン吹き付け塗装とは、骨材(細かく砕いた石や砂など)を塗料に混ぜ合わせ、専用のスプレーガンで外壁に吹き付けて仕上げる塗装工法の一種です。

 

リシン吹き付けは外壁材の名前ではなく塗料です。モルタルやサイディング、それにALCといった外壁材の表面に塗装する塗料となります。



リシン吹き付け塗装の特徴

 

リシン吹き付けで塗装した外壁は、細かい砂粒状のザラザラした質感になり、外壁表面を滑らすように触ると手に傷が出来るぐらい凸凹になります。

 

モルタル外壁にリシン吹き付け塗装されている画像

 

 

 

リシン吹き付けのもう一つの特徴としては、ツヤ消し(マット)に仕上がるという点です。

 

塗装のツヤに関しては好みもありますが、リシン吹き付け塗装は光沢感が抑えられたシックで落ち着いた風合いを演出してくれますので、和風造りのお住まいや南欧風のヨーロッピアンテイストなお住まいなどにはよく合います。



リシン吹き付け塗装の耐久性(耐用年数)

 

リシン吹き付け塗装の耐用年数の目安は約5年です。

 

リシン吹き付けの樹脂(塗料を構成する主成分)はアクリル樹脂で、住宅用塗料の中で最もグレードが低い塗料になります。

 

■塗料のグレード別 耐用年数表

塗料グレード(樹脂) 耐用年数(目安)
アクリル樹脂塗料 約3~5年
ウレタン樹脂塗料 約5~8年
シリコン樹脂塗料 約8~13年
フッ素樹脂塗料 約13~18年

 

新築のお住まいでは約8割がアクリル樹脂塗料を使用されていますが、塗り替えの際には短期間に繰り返しメンテナンスを必要とするリシン吹き付けはコスパが悪く、ウレタン以上の塗料グレードを選ぶ方がほとんどです。



リシン吹き付け塗装の価格相場

 

リシン吹き付け塗装の価格相場は、1㎡当たり1,000〜1,500円程です。

 

工程数(塗り重ね回数)は下塗り・上塗りの2工程仕上げとなり、通常より一工程少ない分工事代も安く仕上がります。(※他塗料は3工程仕上げが一般的)

 

■見積もり例(150㎡)

塗装代

足場

洗浄

養生

その他付帯部

補修費用



リシン吹き付け塗装のメリットとデメリット

 

では、リシン吹き付け塗装のメリットとデメリットを確認していきましょう。

 

リシン吹き付けのメリット

  • 塗料代が安い(一缶8,000〜15,000円程度)
  • 2回塗りなので手間代も安い
  • ツヤ消し(マット)仕上げで落ち着いた雰囲気になる
  • 色あせ・色むら(チョーキング現象)が目立ちにくい



リシン吹き付けのデメリット

  • 塗装しても5年後にはまた塗装時期がくる
  • 塗装の表面がザラザラしている為、汚れ・藻・カビが発生しやすい
  • チョーキング現象が分かりにくく、塗装時期の判断が難しい
  • 吹き付け工事のため、ご近所に塗料が飛散するリスクがある

 

 

リシン吹き付けの塗り替え時期について

 

新築時にリシン吹き付けの塗装をされているお住まいは、劣化状況にもよりますが10年未満での塗装を推奨します。

 

これは、リシン吹き付けの主成分であるアクリル樹脂が約5年で防水性能が一気に低下し始めるためであり、築10年ほどで外壁材(モルタルなど)にヒビ割れなどの症状が出始めるためです。

 

外壁材にヒビ割れなどが発生してしまえば、今度は塗装代以外に補修費用が別途必要になり、さらに補修跡が段差となって、見栄えが悪くなるなど外観にも影響してきます。

 

ですから、外壁材に症状が出始める前の築10年未満で塗り替えをしてあげることをおすすめします。



リシン吹き付けの塗り替え時期の確認方法

 

リシン吹き付けの場合の塗り替え時期のチェック方法は少し特殊です。

 

一般的な確認方法は、外壁を軽く手で触るとチョークのような白い粉がつく「チョーキング現象」が塗装時期の目安となりますが、表面がザラついているリシン塗装は、チョーキングがほとんど手に付きません。

 

✅一般的な外壁のチョーキング現象

大和ハウスのサイディング外壁のチョーキング現象

上の画像は、大和ハウスのパネル外壁のチョーキング現象。触ると粉が手につくので分かりやすい。

 

 

そのためリシン吹き付けの場合は、外壁表面を触ってザラザラした骨材(砂や石)がポロポロ落ちるかどうかで塗装時期を判断していきます。

 

 

✅こちらがリシン吹き付けの状態チェック画像

劣化によりリシン吹き付け塗装の砂骨材が剥がれている様子

劣化によりリシン塗装の骨材がボロボロと剥がれてきている様子。しかし、チョーキングはほとんど手につかない。

 

劣化によりスキン塗料の骨材がボロボロと剥がれ落ちている様子

こちらはリシン塗装によく似たスキン塗装。同様に劣化するとボロボロと骨材が剥がれてくる。

 

 

もし上の画像のように骨材(砂)がボロボロと落ちるようなら塗装を検討する時期と考えられます。『チョーキングしてないからうちはまだ大丈夫』と、塗装時期を見誤らないようにだけご注意ください。

 

※外壁の状態を確認する際は、一番症状が出やすい陽が当たる南面の外壁をチェックしましょう。 

 

 

弾性リシン吹き付けとは?

 

リシン吹き付けの種類の一つに「弾性リシン」というものがあります。

 

弾性とは、弾力性のある・伸縮性があるという意味で、通常のリシン吹き付けよりも伸び縮みしやすい性質を持っているため、ヒビ割れを起こしやすいモルタル壁などに適した塗料です。

 

ちなみに、見た目も耐用年数もリシン吹き付けとさほど変わりません。

ALC外壁に弾性リシン塗装をされている画像

見た目の違いはないが、塗膜に弾力性があり、通常のリシン塗装よりヒビ割れしにくい。

 

 

✅ご自身のお住まいが弾性リシンかどうかを確認する方法

※塗装表面の尖った先端を爪で押してみて

  • ムニュッとヘコむ場合
    ➡︎弾性リシン吹き付け(弾性タイプ)

  • パリッと割れる場合
    ➡︎通常リシン吹き付け(硬質タイプ)

 

 

「リシン吹き付け」と「リシン掻き落とし」はどう違う?

 

「リシン掻き落とし」と「リシン吹き付け」はまったく別物になります。

 

「リシン掻き落とし」とは、大正時代にドイツから日本に輸入されたセメントモルタル材「リシンプッツ(商品名)」を外壁に塗りあげた後に、ワイヤーブラシなどで表面を削りあげて外壁に模様を作っていく左官工事です。

 

リシン掻き落としの外壁

リシン掻き落としの外壁

 

 

一方で「リシン吹き付け」とは、骨材を混ぜた塗料を吹き付けて外壁表面をデザインしていく塗装工事となります。

モルタル外壁のリシン吹き付け塗装

こちらがリシン吹き付け塗装。見た目は「掻き落とし」とよく似ているが、作業過程はまったく違う。

 

※外壁の塗り替えでは「リシン掻き落とし」工事はできません。

 

 

リシン吹き付けにはアスベストを含んでる?

 

厚生労働省は、2006年9月1日よりアスベスト(石綿)の製造、および使用を禁止する労働安全衛生法施行令を改正しています。

労働安全衛生法施行令の一部を改正する政令及び石綿障害予防規則等の一部を改正する省令の施行等について

 

ですので、2006年(平成18年)以降に建てられたお住まいではアスベスト(石綿)は一切使われていません。それより前に建築された、または外壁塗装工事をされたお住まいにはリシン吹き付け塗装にアスベストが含まれている可能性があります。

 

 

アスベストに関しての詳細はこちらで解説しています。



リシン吹き付け塗装についてのまとめ

 

今回は、リシン吹き付けに関する基本的な塗装知識を一通り解説してきました。 



最後にリシン吹き付け塗装の主要部分をまとめておきます。

 

リシン吹き付けの特徴とメリット・デメリット

  • 耐用年数(防水性)は約5年
  • 価格相場は1,000〜1,500円/㎡とかなり安い
  • 汚れや藻・カビが発生しやすい
  • ツヤ消し(マット仕上げ)で落ち着いた雰囲気になる

 

 

新築では、住友林業や三井ホームなどのモルタル外壁や、和風造りのお住まいなどでいまだに使われ続けているリシン吹き付けですが、個人的には塗り替え用としてはあまりおすすめできない塗料です。

 

理由は、塗料の耐用年数の短さです。

 

いくら塗料そのものの値段が安いとはいえ、5年おきの塗り替えはコスパが悪すぎます。外壁塗装工事は塗料代だけではなく塗装の手間代や足場代、それに洗浄や養生代などもその都度かかりますので、塗り替える回数が増えれば増えるほど長期的にみてコストパフォーマンスが悪くなるわけです。

 

 

リシン吹き付けの塗り替えに最適なツヤ消し塗料はこちら

 

塗料選びのすべてがわかる記事

 

シリコン塗料

 

ラジカル塗料

 

フッ素塗料

 

無機塗料

 

特殊な塗料

 

その他の塗料に関する情報

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この記事を書いた人

年商6億の元塗装会社社長がお届けする外壁塗装の豆知識。業界20年の経験・体験をもとに、他では聞けない役立つ情報から裏情報までお届けしています!
<これまでの経歴>
大手不動産会社勤務、大手塗装会社勤務、2015年塗装会社設立、約20年以上にわたり建築塗装全般に携わり、現在は塗装業のコンサル事業を展開。

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