今回は、外壁や屋根の温度を下げる効果を持った「遮熱塗料」について解説していきます。
- 室内温度は何度ぐらい下がるのかな?
- 夏場は特に部屋が暑くなるから遮熱塗料が良いのかな?
- エアコン代っていくらくらい安くなるのかな?
- 塗料代は少し高くなるけどやった方が得なのかな?
もし仮に、あなたが遮熱塗料に対してこういった要望を持っているならば今すぐやめておいた方が良いでしょう。
なぜなら、遮熱塗料を塗ってもエアコン代が浮くような経済効果は見込めないからです。
本記事では、住宅塗装20年以上の現場管理者が、忖度なしに遮熱塗料の本当の効果や相場価格、メリット・デメリットなどを解説しています。
他では聞けない、プロだからこそ知っている本物の情報を、是非あなたの外壁塗装工事にお役立て下さい♪
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遮熱塗料とは?
遮熱塗料とは、太陽光の50%を占める赤外線を反射して、塗布部の表面温度の上昇を抑えることが出来る塗料のことです。
引用:日本ペイント「サーモアイシリーズ」カタログより
遮熱の仕組みは、塗料の中に「赤外線を反射する特殊な顔料」を配合することで塗布物の表面温度上昇を抑制しています。
※遮熱の仕組みについては塗料メーカーにより異なります。
遮熱塗料と断熱塗料の違いはなに?
遮熱塗料は、よく断熱塗料と間違えられます。
どちらも温度上昇を抑えてくれる効果のある塗料ですが、意味合いは別のものですので覚えておきましょう。
■遮熱塗料と断熱塗料の違い
遮熱塗料 | 断熱塗料 | |
特 徴 | 赤外線を反射する | 熱を伝わりにくくする |
仕組み | 特殊な顔料を塗料に配合 | 中空ビーズを塗料に配合 |
その他の効果 | 特になし | 保温効果がある |
外部の温度を室内にまで伝わらせない効果を持つ断熱塗料は、逆に言えば冬場の室内温度を外に逃さない効果もあると言えます。
一方、遮熱塗料には保温効果はなく、あくまでも熱反射効果のみとなります。
遮熱塗料にはどんな効果がある?
夏場の屋根(コロニアル瓦)の表面温度は、最大で70℃まで上がるといわれています。
遮熱塗料は、その表面温度を15〜20℃下げることが出来る塗料です。
しかし、これはあくまでも屋根瓦の表面温度の話。
1階にあるリビングの室内温度がここまで下がることはまずありません。
下がっても2階の室内が1〜2℃ほどですから、『遮熱効果のおかげで今年は涼しいね♪』という体感出来るほど温度は下がりません。
遮熱塗料の歴史
遮熱塗料は、もともと大きな工場などの室内温度を下げるために開発されました。
というのも、室内空間が広い工場や体育館などは温度を1℃下げるために、ものすごいエネルギー量(ようするに電気代)が必要になってきます。
そこで『何か良い方法はないものか?』となり、開発されたのが遮熱塗料というわけです。
当時は遮熱塗料も高額塗料でしたが、毎月の電気料金を抑えられるなら断然コスパが良い、ということで一気に広がりました。
それに当時の工場は、屋根に断熱材もなく熱伝導率も高い金属製屋根も多かったため、遮熱効果がダイレクトに影響し、実際かなりの光熱費の削減に繋がったといいます。
その後一般住宅でも徐々に話題となり、近年の省エネECOの遮熱塗料ブームがやってきたというわけです。
しかし、一般住宅の屋根はセメント瓦や陶器瓦がメインとなり、さらには屋根の構造がしっかり造られているため、「毎月のエアコン代が〇万安くなった」といったような経済効果は実感できない現状です。
遮熱塗料のメリットとは?
では、遮熱塗料は一般住宅に塗装しても意味ないのか?といえばそういうわけではありません。
一般住宅での使う遮熱塗料の最大のメリットは、「素材を熱から守る」です。
先ほど説明したように、夏場の屋根温度は70℃まで上昇することもありますので、そういった過酷な条件下で温度を下げるということは、瓦の素材を守り、さらには屋根裏の木材を守るといったことにも繋がってきます。
遮熱塗料のデメリットとは?
では続いて、遮熱塗料のデメリットもお話ししておきます。
遮熱塗料のデメリットは、「外壁は、屋根以上に効果が期待できない」という点です。
もうお分かりだと思いますが、外壁は東西南北で太陽光(赤外線)に晒される面が異なります。特に、東面や北面などまったく太陽光が当たらない場所についてはほとんど効果は得られないでしょう。
「熱による外壁材の痛みを和らげる効果はあるのでは?」と考える方もいるかもしれませんが、個人的にはそれであれば塗料グレードをワンランク上げたほうが効果的な気がします。
遮熱塗料は補助金や助成金制度が使えて安くなる?
続いて、遮熱塗料の補助金・助成金制度について。
まず、遮熱塗料を使った外壁塗装工事の場合、補助金・助成金の受給は可能です。
受給額は各自治体により変わりますが、一般的には最大25万円までが多いようです。
しかし、正直言って簡単には使えないと思っておいた方が良いでしょう。
■補助金・助成金申請時が簡単ではない理由
- いつ開始するかは決まっていない。
⇒毎日市町村・自治体のHPをチェックしておかないと気付けない - ほとんどが抽選や先着順で、受付当日に終了していることも多い。
- 提出する書類がやたら多く、手続きがとんでもなく面倒。
- 申請資格、工事条件が非常に細かい。
⇒遮熱塗料だけではなく、バリアフリー工事なども条件に組み込まれていたりする
まぁ、よくここまで複雑化したものですね。むしろホントは使わせたくないのかな?と疑いたくなるレベルです。
対策としては、補助金や助成金に対応している塗装業者に依頼すると手っ取り早いと思います。
これから塗装業者探しをする予定の方は、補助金や助成金が対応可能な最寄りの優良塗装屋を無料で紹介してくれる便利なサービスがありますので、ぜひ活用してみて下さい。
ご自身で助成金や補助金が使えるかどうかチェックする場合は、一般社団法人 住宅リフォーム推進協議会が運営する「地方公共団体における住宅リフォームに係わる支援制度検索サイト」を利用すると便利ですよ。
遮熱塗料の費用相場っていくらぐらい?
遮熱塗料の費用相場は、一般の塗料(遮熱なし)より若干高くなる程度です。
【EX】100㎡の屋根塗装工事(フッ素塗料)で比較
セミフロンルーフⅡ (4,300円/㎡) |
セミフロンルーフⅡ遮熱 (4,500円/㎡) |
|
足場代 | 15万円 | |
洗浄代 | 3万円 | |
屋根塗装(100㎡) | 43万円 (100㎡×4,300円) |
45万円 (100㎡×4,500円) |
合 計 | 61万円 | 63万円 |
※上記はKFケミカル株式会社の高級フッ素塗料で比較。平米単価はメーカー設計単価表を適用。
遮熱塗料とノーマル塗料との工事費用の差は2万円。
上記はあくまでも一例ですが、遮熱塗料を使っても工事費用にそこまでの差がないことが分かります。
まとめ:遮熱塗料とはどんな塗装?
今回は、遮熱塗料についてお届けしてきました。
◆最後に遮熱塗料の情報をまとめておきます。
- 屋根瓦に遮熱塗料を塗っても室内温度は下がっても1~2℃程度です。
- 「エアコン代(電気料金)を安くしよう」という目的で遮熱塗料を使うつもりならおすすめしません。
- 遮熱塗料は「温度を下げる目的」ではなく「素材を守る目的」で使用しましょう。
これまで少なくとも200軒以上の屋根を遮熱塗料で施工しましたが、どのお客さんも「室内温度が下がったといえばそうかもしれないね~」といった感じです。
ただ、塗装工事の本来の目的である「家(素材)の寿命を延ばす」といった観点から考えると、遮熱塗料はかなり優れた塗料だと思いますので、検討する価値は十分あると思います。
◆当サイトでは、これから外壁塗装を検討している方に向けて、業界人だからこそ知っている本当に役に立つ情報を分かりやすく発信しています。
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